バイヤーとサプライヤーが共に築くサステナブルなサプライチェーン―EcoVadisを通じた対話と改善の実践

January 15, 2026 JA ECOVADIS JA

サプライチェーン全体のサステナビリティを高めるためには、バイヤーとサプライヤーが双方の取り組みを可視化し、評価に基づく改善を共に進められる仕組みづくりが欠かせません。その基盤となるのが、両者の“相互理解”です。

本記事では、2025年10月31日に行われたEcoVadis World Tour Japan 2025のトークセッション「共創する未来:EcoVadisで拓くサプライチェーンの相互理解と成長戦略」をもとに、Ecovadisを活用する企業がどのように管理体制を整え、取り組みを進めているのかをご紹介します。

登壇者として、小野薬品工業株式会社 調達購買部部長 齋藤滋氏、KDDI株式会社 購買本部 購買統括部 サステナブル調達企画グループリーダー 新谷陽一郎氏、株式会社サニーサイドアップグループ 執行役員社長室室長 谷村江美氏、株式会社ファイントゥデイホールディングス ステークホルダー・リレーションズ本部 サステナビリティ推進グループ グループマネージャー 村上奈歩氏をお招きし、進行はEcoVadis 代表取締役の若月上が務めました。 

EcoVadis利用状況から見えるバイヤー・サプライヤーの現在地

まず、バイヤー企業である小野薬品工業とKDDIが、どのようにEcoVadisを活用しているのかを伺いました。続いて、サプライヤーの立場にあるサニーサイドアップグループとファイントゥデイの受審状況や評価の背景についてご紹介します。

まず、バイヤー企業である小野薬品工業とKDDIのEcoVadisの利用状況についてお聞かせください。

齋藤氏:小野薬品工業では、2019年からEcoVadisを導入しました。当時は原材料を扱う取引先を中心に受審を依頼していましたが、2023年以降は対象範囲を拡大し、現在は取引額80%を指標に依頼を進めています。私たちは人命に関わる商品を作り、お届けする事業を担っているため、事業上、重要と判断した業種や取引金額に応じて基準を設け、対象を絞って取り組んでいます。

新谷氏:KDDIでは2023年にEcoVadisを導入し、取引額上位90%にあたる150~200社に受審を依頼しています。初年度は5割、翌年度は7割、今年度は8割をKPIとし、受審企業を増やす取り組みを継続してきました。また、未受審企業へのアプローチについては、通信企業3社(KDDI、NTT、ソフトバンク)が協力し、ハンドブック作成などの支援策も講じています。

一方、サプライヤー企業であるサニーサイドアップグループとファイントゥデイは何がきっかけで受審し、どのような評価を得ましたか。

谷村氏:サニーサイドアップグループは、2017年に初めてEcoVadisを受審しました。きっかけは欧州の取引先から「評価受審をしなければ取引継続が難しい」と対応を迫られたことです。当時はサステナビリティ担当を置いておらず、社内の理解を得るのに時間を要しましたが、本年改めて受審し、ブロンズメダルを頂戴しました。特に人権の項目で100点と、高く評価されたことが励みになっています。社内の過半数を女性が占め、活躍していること、健康面に配慮したユニークな福利厚生や制度を設けていることなどが高く評価されたのだと思います。 

村上氏:ファイントゥデイが受審したきっかけは、CVCから「2年以内にEcoVadisを受審し、シルバーメダルを目指す」というミッションを課せられたことです。資生堂とCVCの出資を受けて創業したという背景による、特殊なケースだと思っています。このミッションから逆算して取り組みを進めた結果、2年目、3年目と続けてゴールドメダルを取得できました。

バイヤー・サプライヤー双方におけるサステナビリティ体制の実情

バイヤー企業とサプライヤー企業は、それぞれどのような社内体制でEcoVadisの評価に対応しているのでしょうか。ここでは、両者の組織づくりと協力体制について伺いました。

バイヤーの立場にある小野薬品工業とKDDIは、どのような管理体制で評価の依頼に臨んでいますか。

齋藤氏:当社ではマネジメントと実務で体制を分けています。マネジメント側は、副社長を筆頭にボードメンバーが集まる会議体を設け、EcoVadisだけでなく社内のサステナビリティ活動全体を管理しています。一方、サステナブル調達の実務はマネジメント2名を含む7名で担当しており、専任者はいません。導入当初は100社以上に一斉に受審依頼をする必要があり苦労しましたが、現在は新規取引先へのフォローが主な業務です。 

新谷氏:KDDIの場合は、年2回、持続可能な調達の活動をボードメンバーに報告し、EcoVadisの分析結果をもとに課題と次の打ち手を整理しています。体制は専任3名を含む6名で、中期経営計画に「サステナビリティ経営」が位置づけられており、ボードメンバーの間でもEcoVadisの重要性が共有されています。

一方、サプライヤーの立場にあるサニーサイドアップグループとファイントゥデイは、どのような体制で評価に臨んでいますか。

谷村氏:評価取得には社内の幅広い協力が欠かせないため、サニーサイドアップグループではコーポレートが一丸となって取り組みを進めています。まず、サステナビリティへの取り組みが競争戦略や企業成長につながることを社内に共有し、理解を得るところから始めました。近年は外部から評価取得の有無を問われる場面が増え、早期に取り組んでいたことへの評価も社内で広がり、足並みがそろってきた実感があります。

村上氏:ファイントゥデイは創業4年の新しい会社であるため、第三者の客観的な評価は信頼性を示すうえで重要だと、マネジメント層を含めて共通認識を持っていました。サステナビリティ推進について聞かれた際、「EcoVadisでゴールドメダルを取得している」と伝えると理解を得やすく、非常に役立っています。実務はサステナビリティ担当が中心となり、人事やリスクマネジメントなど社内の関係部署と連携しながら対応しています。

サプライヤーエンゲージメント向上に向けたバイヤー企業の取り組み

バイヤー企業である小野薬品工業とKDDIがどのようにサプライヤーへ働きかけ、受審を促しているのかを伺いました。

バイヤー企業として、サプライヤーエンゲージメントを高めるための工夫はされていますか。

 齋藤氏:初年度はサプライヤーの皆さんにお集まりいただき、イベント形式で受審をお願いしていました。現在は、契約時に必要な書類と説明動画をパッケージ化してお送りしています。重要なのは、サプライヤーの皆様に選択肢を示すことだと思います。当社の場合はまずEcoVadisを案内しますが、対応が難しい場合は、他の方法で対応できるか選択肢を提示しながらコミュニケーションを取っています。

新谷氏:KDDIでは毎年6〜7月に取引先説明会を開き、購買本部長から直接メッセージを発信しています。こうした形にしているのは、現場レベルだけでなく、上位レイヤーの方々にも受審の意義を理解していただくためです。今年からは受審を原則必須としていますが、対応が難しい企業には個別にフォローしています。また、受審結果の分析を踏まえて、総合点だけではなく、初めて受審をした企業や、特定の分野で課題を持つ企業を訪問し、改善に向けた対話を重ねています。受審を促す本質的な目的は、客観的評価で浮き彫りになった課題に対処することなので、改善に向かう道のりを支援することも大切にしています。

是正措置の推進と、サプライヤー側が求める支援

最後に、是正措置に向けたバイヤー側の取り組みと、サプライヤー側が必要とする支援について伺いました。

バイヤー企業として、是正措置にはどのように取り組んでいますか。

齋藤氏:当社では、是正が必要と判断したサプライヤーに対して現場での監査を実施したことがあります。初めは外部の専門会社にサポートいただき、手法を学びながら進めました。そのときの監査では、提出書類の不備が主な要因となっていることがわかり、フォローアップを重ねることで改善につながりました。結果として、次回以降は監査が不要になるなど、前向きな変化も生まれています。とはいえ、監査のご理解、ご協力が難しいサプライヤーもいるため、まだ道半ばという認識で取り組みを続けています。 

新谷氏:私たちKDDIが重視しているのは、サプライヤーとの接点を増やすことです。たとえば「2040年までにネットゼロを目指す」という指標の達成に向け、取引先の皆様のもとに「お手伝いをします」という切り口で何度も足を運ぶ、といったアプローチをしています。また、NTT・ソフトバンクと連携し、第三者監査も実施しています。特別な施策ではありませんが、こうした地道な取り組みの積み重ねが、是正への意識向上につながると考えています。

是正に取り組むサプライヤー側としては、どんなフォローがあると助かりますか。

谷村氏:「なぜ取り組む必要があるのか」をはっきり示していただけると助かります。私たちサニーサイドアップグループは無形商材を扱うPR会社で、最初は自社がサプライヤーに該当する意識すら薄い状況でした。そのため社内の理解を得るのに苦労しました。将来的にはサステナビリティに対する意識が変わって、EcoVadisの評価受審が当たり前になっていくのかもしれませんが、特に中小企業ではサステナビリティの優先度がまだ高くありません。背景説明や意義づけがあると非常に取り組みやすくなります。

村上氏:バイヤーからの働きかけは、サプライヤー側の改善意欲を後押しする面があります。是正にはコストも社内説得も必要で、担当者が「やったほうがいい」「やりたい」と思っていても進まないケースがあるためです。競合他社の状況などを共有いただけると、マネジメント側を説得しやすくなり、企業として動きやすくなるのではないかと思います。

相互理解と協働がつくる、持続可能なサプライチェーンの未来

 今回の対話からは、バイヤーとサプライヤーの相互理解が、評価に基づく改善を進める土台となることが改めて明らかになりました。

 

EcoVadisを共通基盤とすることで、双方が取り組むべき課題が可視化され、対話に基づく協働や改善のサイクルがより確かなものになりつつあります。こうした継続的な連携こそが、持続可能なサプライチェーンを

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