サプライヤーと持続可能な未来を築くための10のステップガイド:ゼネラル・モーターズのサステナビリティ・カウンシルを事例に

サステナビリティのゴールを設定するのは簡単そうに思えますが、実際に達成するのは大きな挑戦です。特に、多くの企業が直面しているのが、サプライチェーンにおけるScope 3排出量の削減です。これを達成するためには、サプライヤーとの協力が欠かせません。しかし、広がりのあるサプライチェーン全体でどうすれば効果的に変革を進めることができるのでしょうか。

2020年、米国の大手自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)は、主要なサプライヤーを集め、サステナビリティに焦点を当てた対話の場を設けました。これが「GMサプライヤー・サステナビリティ・カウンシル(SSC)」です。このカウンシルは、GMの「サプライヤー・ビジネス・カウンシル(SBC)」を基盤に設立され、グローバル購買・サプライチェーン(GPSC)部門と緊密に連携し、サプライヤーとの関係を強化しながら、持続可能性の取り組みを推進しています。サステナビリティ・カウンシルにはGMの複数の部門と14の主要サプライヤーが参加しており、サプライチェーン全体を代表する意見を集約する役割を果たしています。現在、サステナビリティ・カウンシルはサプライヤーが主体的に関わり、組織の発展に寄与できる環境を整えています。

 

この記事ではGMのサステナビリティ・カウンシルを例にして、サプライヤーの参画を促進するための重要なポイントを解説し、グローバルなサプライチェーン全体にどのように持続的な変革をもたらしたかを、10のステップに分けて学んでいきます。

 

ステップ1 目的と目標の設定 

サステナビリティ・カウンシルを組織するための第一歩は、その目的を明確にすることです。グループが進むべき方向性を定め、主要な目標を具体的に設定しましょう。

GMでは、サステナビリティ・カウンシルの目的を事故ゼロ、排出ゼロ、渋滞ゼロというビジョンに沿って設定しました。このビジョンは、サプライヤーと協力して企業や地域社会にとってより持続可能な未来を築くことを目指しています。具体的には、以下のGMの行動を通じて、この目的の実現を図っています。

  • GMチームの意見交換の場として、グローバル購買部門のサステナビリティ戦略と実行を強化し、知見を共有する​​

  • GMと協力してグローバル購買部門のサステナビリティ・イニシアチブと戦略策定を主導し、これを推進する​​

  •  各組織およびサプライチェーンのサステナビリティプログラムの成長を支援する

 

サステナビリティ・カウンシルの目的は、GMのニーズに加えて、各会員組織のニーズにも応えるよう設計されています。その内容には以下が含まれます。

  • 参加を通じて、各サプライヤーのサステナビリティプログラムを強化すること

  • GMのグローバル購買部門がESG目標を達成するための強固なプログラムを構築すること

ステップ2 サプライヤーの選定 

GMのサステナビリティ・カウンシルは、既存のSBCの支部として設立されたため、最初のメンバーはSBCメンバーから選ばれました。サステナビリティ・カウンシルとSBCの間で一貫したコミュニケーションを維持することで、全メンバーが常に最新のサステナビリティ・イニシアチブに関する情報を共有できる体制を整えています。

ステップ3 自社とサプライヤーに適した進め方の確立

 

サステナビリティ・​​カウンシルのメンバーが揃ったら、自社とサプライヤーの双方に合った進め方を見出すことが重要です。

GMでは当初、サステナビリティ・カウンシルのミーティングを毎月実施していましたが、すぐに隔週のバーチャルミーティング(1時間)に切り替わりました。ミーティングのアジェンダと手順は以下の通りです。

 

  • GMの社員またはサステナビリティ・カウンシルのメンバーが、安全、サステナビリティ、DEIに関するメッセージを伝える

  • 主要なサステナビリティ関連のトピックを設定

  • トピックに関する短いプレゼンテーションを実施

  • 質疑応答またはグループディスカッション

時間が許せば、次のような質問を含めた座談会を実施:

・誇りに思う取り組みは何か?

・現在直面している課題は何か?

 

さらに、GMのサステナビリティ・カウンシルでは、外部のサステナビリティ専門家を頻繁に招き、特定のトピックについて講演を依頼しています。また、メンバー自身にも、自社のサステナビリティ開発に関するプレゼンテーションを行ってもらい、他のメンバーの学びや教育につなげています。

 

ステップ4 協力を通じたメンバーの関係を強化 

メンバーを集め、全員のニーズに合ったミーティング形式を決めた後は、関係をさらに深めるための方法を考えます。サプライヤーがサステナビリティにさらに意識を向けることで、全ての関係者にとって有益な関係を築くことができます。

GMでは、サプライヤーが新しいアイデアやプロジェクトを持ち込み、他のメンバーと共有することを強く推奨しています。これにより、開かれた対話の機会が増え、メンバーが会議以外でもサステナビリティ・イニシアチブを発展させることができる環境が整いました。

サステナビリティ・カウンシルが支援した具体的なイニシアチブの例として、GMサプライヤーの「誓約」が挙げられます。この誓約はGMの最終承認を得る前にカウンシルに持ち込まれ、フィードバックを得た後に承認されました。サステナビリティ・カウンシルメンバーの関わりが誓約目標の承認に大きな役割を果たしたのです。​​さらに、GMのエネルギートレジャーマッププログラムへの参加や、GMサプライヤー・サステナビリティシンポジウムへのゲストスピーカーの参加を通じて、GMのサステナビリティ・イニシアチブも貢献してきました。

 

サステナビリティ・カウンシルのメンバーのコメント:

「サステナビリティ・カウンシルのメンバーとして、GMと共に持続可能なサプライチェーンを創造する可能性を見出しました。私たちは、他者から学び知識を共有することで、グループに価値をもたらすことを約束します」

 - ネマック社、Marc Winterhalter氏

 

ステップ5 波及効果 

 

サステナビリティ・カウンシルの影響が広がると、サプライチェーン全体にポジティブな変化が波及し始めます。

GMのサステナビリティ・カウンシルのもたらす良い影響は、サプライヤーが独自のサステナビリティ・カウンシルを設立したことからもわかります。具体的には、2024年初め、GMのサプライヤーであるAAMが、GMを手本にした独自のサステナビリティ・カウンシルを設立しました。

これまでに、約70社のサプライヤーがGMのワークショップに参加し、サステナビリティ・カウンシルに似たコホート・グループ(協働グループ)を形成してきました。いくつかのサプライヤーは独自のサステナビリティ・カウンシルを設立したいと考えており、GMはワークショップへの参加を促し、質問に応じながら、互いに学び合う機会を提供しています。

 

ステップ6 エンゲージメントの維持 

 

サステナビリティ・カウンシルを設立し、その成果がサプライネットワーク全体に広がった後は、エンゲージメントを維持し、サプライヤーの意欲を高め続けることが重要です。

GMは以下の3つのアプローチによって、自社の枠を超えた広範なネットワークを構築しました。

サステナビリティ・カウンシル所属企業のフォローアップ

メンバーに対してインタビューを行い、ミーティングの頻度、参加者、議論の主要トピックを確認します。

サポートの提供 

サプライヤーのカウンシルミーティングに出席し、知見を共有します。過去に取り上げたトピックの中で、サプライヤーやそのサプライチェーンに有益な内容を検討します。

コミュニティの構築 

グループ間で連絡先を共有し、サステナビリティに関する取り組みをサポートするコミュニティを形成します。

 

サステナビリティ・カウンシルのメンバーのコメント:

「GMのサステナビリティ・カウンシルは、私たちのチームにGMのサステナビリティ優先事項に関する貴重な洞察を与えてくれ、顧客のニーズにより的確に応えられるようになりました。また、サステナビリティ・カウンシルは他のGMサプライヤーと知見を共有し、共通の課題に対する解決策を協力して見つける貴重なプラットフォームでもあります」

 

- ライダー・システム社、Margarita Kruyff氏

ステップ7 改善と拡大 

 

サステナビリティ・カウンシルを設立し、メンバーが参加するようになったら、プロセスをどのように改善するかを考えます。

最も効果的な改善方法の一つは、フィードバックを集めることです。GMでは、メンバーがサステナビリティ・カウンシルにアイデアを提出し、率直なフィードバックを共有できることで、改善への重要な原動力となり、移すべき行動が明確化されます。

また、コミュニティを拡大したい場合は、成功事例を共有することが重要です。GMはSBCの更新に加え、GMサステナビリティ・レポートを通じてその取り組みを公開し、自社の影響力を示しながらコミュニティ全体の変化を促してきました。

 

ステップ8 より広いコミュニティで前進

 

スタンダードを確立し、成功を共有した後は、次にその変化を新しいコミュニティにどのように広げるかを考えます。

例えば、GMは、新しいEラーニング・プラットフォームの開発において、追加資金を必要とする全米自動車産業協会(AIAG)を支援しました。サステナビリティ・カウンシルに提案書が提出された後、メンバーがAIAGの資金調達活動を支援し、同プラットフォームは無事に立ち上げに至りました。

 

ステップ9 EcoVadisの活用

 

EcoVadisとの協働はGMにとって、サステナビリティ・カウンシルが取り組むサステナビリティ活動の成功と進捗を測定し、評価するための具体的な方法を示すケーススタディとなりました。

GMでは、ティア1サプライヤーにEcoVadisの評価を受けることが義務付けられており、この標準化されたアプローチが議論の促進や新たなトピックの発見に役立つことが証明されています。

また、EcoVadisはサステナビリティ・カウンシルのメンバーに継続的なサポートを提供し、ミーティングに参加して議論を行い、専門家の見識を提供しています。

 

ステップ10 継続的な改善 

 

では、将来を見据えた時、どのように積極的な発展を支援していくべきでしょうか?

GMの次のステップは、これまでのプロセスから得られた洞察を活用し、サプライヤーのニーズに効果的に対応できるワークショップを企画・調整することです。新たなサプライヤーをサステナビリティ・カウンシルに参加させるだけでなく、GMは直接的な対話の機会を増やし、エンゲージメントを高め、オープンなコミュニケーションを促進していく予定です。

著者について

‏‏JA‎ E‏‏‏‏coVadis ‏‏JA‎

EcoVadisは、世界のビジネスにおいて最も信頼されるサステナビリティ評価の提供をミッションとする会社です。専門知識とエビデンスに基づく独自の評価システムにより、企業とその取引先のサステナビリティパフォーマンスを監視し、改善のための提案を行っています。EcoVadisによる評価は200の業種と175カ国の状況を網羅しており、実用的なスコアカードやベンチマーク、脱炭素に向けたアクションツール、インサイトを通じて、環境的で社会的かつ倫理的な改善を促進します。

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