EcoVadisでグループのESGガバナンスを強化。日本特殊陶業が挑む未来志向のサステナビリティ経営のかたち

January 13, 2026 JA ECOVADIS JA

日本特殊陶業株式会社は、創業以来セラミックス技術を基盤に、多様な産業分野へ製品を提供してきたグローバル企業です。長年にわたり培ってきた素材技術・加工技術を強みに、社会インフラを支えるさまざまな製品を開発し、世界のものづくりに貢献してきました。

同社では、事業成長と社会価値創出を両立すべく、サステナビリティを経営の重要テーマと位置づけ、早くからグローバル調達におけるESGリスクマネジメントの強化を進めています。2012年にはEcoVadisを導入し、グループ全体で評価プロセスの整備や改善サイクルの定着に取り組んできました。

本記事では、2025年10月31日に開催されたEcoVadis World Tour Japan 2025において、グローバル戦略本部 ウェルビーイング戦略グループ サステナビリティ戦略室長の久禮圭祐氏が語った、Niterraが挑む事業変革と未来志向のサステナビリティ経営についてご紹介します。

持続可能な社会の実現に貢献し、地球を輝かせる企業へ

日本特殊陶業は、ガソリン車のエンジンに欠かせないスパークプラグの製造を原点に、自動車部品、半導体関連部品、医療機器、産業用セラミック部品など、幅広い分野で使用される製品を提供してきました。現在、世界約140カ国へ製品を展開し、海外売上比率は8割に達しています。主力製品であるスパークプラグと酸素センサーは世界No.1のシェアを誇り、グローバル市場において確固たる地位を築いています。

2023年4月、同社は英文社名を「Niterra(ニテラ)」へと変更しました。これはラテン語の「niteo(輝く)」と「terra(地球)」を組み合わせた造語であり、「地球を輝かせる企業となる」という決意が込められています。

売上収益約6,530億円のうち82%を自動車関連事業が占める同社ですが、EVシフトの加速という大きな環境変化を踏まえ、「モビリティ」「半導体」「環境・エネルギー」を軸とした事業ポートフォリオへの転換という大きな変革に挑んでいます。

未来志向のサステナビリティ経営を目指して

同社のサステナビリティ戦略は、これまで外部要請に応えるかたちでの短期的な取り組みが中心でしたが、現在は中長期視点の未来志向型へと大きく舵を切っています。

CSR・サステナビリティ憲章では「持続可能な社会の実現に寄与することで企業価値の向上を目指す」ことを宣言。透明性の高い経営を行いながら、ステークホルダーとの信頼関係を構築すること、社会的課題の解決に資する新たな価値を共創・提供することを定めています。

その基盤となるのが、企業理念、CSR・サステナビリティ憲章、「至誠信実」「独立自営」「四海兄弟」「素志貫徹」という4つの共有価値観などで構成される理念体系「Niterraウェイ」です。この理念のもと、既存のセラミックスを中心としたアセットと新たなアセットを融合させ、社会的課題解決に挑戦しています。

同社は2040年に目指す姿として「これまでの延長線上にない変化」を掲げ、2030年までの中期経営計画を実行中です。環境関連の行動計画「エコビジョン2030」では、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2030年度にCO2排出量を2018年度比で30%削減することを宣言しています。(26年4月からは46%に引き上げ予定)

 


培った技術を社会課題の解決に生かす

久禮氏は、この高い目標の実現に向け、「今後注力するモビリティ、半導体、環境・エネルギーの各領域において、社会課題解決につながる製品開発を積極的に進めています」と説明し、同社が取り組む技術開発の事例を紹介しました。

同社は、電気自動車向けベアリングに使用されるセラミックボールや、パワー半導体の絶縁と放熱を担うセラミックス製放熱基板(窒化ケイ素)の開発を進めています。これらの技術は、次世代モビリティの実装に欠かせない要素として期待が高まっています。

さらに、次世代エネルギー領域にも力を入れており、特に注力しているのが、水素などの燃料から電気を作り出すSOFC(固体酸化物形燃料電池)の開発です。この技術を生かし、セラミックスを利用したSOEC(固体酸化物形電解装置)により電気と水から水素を生成するなど、工場等から排出されるCO2を回収してエネルギーとして再利用するCCU(Carbon dioxide Capture Utilization)技術の開発を推進しています。

また同社は、水素社会・炭素循環社会の実現を加速させるため、2024年5月に40億円規模のファンドを設立しました。水素・炭素循環型社会をテーマとしたスタートアップ企業への投資を行っており、小牧工場敷地内には専用の実証フィールドを建設。すでに複数企業が入居し、共創型の実証実験が進められています。 

 


人を重視し、人を動かすサステナビリティ戦略


一方で、CO2排出量の削減がロードマップ通りに進まないという課題を予期した同社は、独自の「社内炭素税」を導入しました。CO2排出量1t当たり1万円と設定し、徴収した年間20数億円を「環境ファンド」としてプール。これをCO2削減投資への補助金として還元する仕組みです。久禮氏は「CO2削減に対する現場の意識が高まり、実際に取り組みが加速しています」とその効果を説明しています。

また同社では、最も重要な資本は人であるという認識のもと、女性や外国籍、キャリア採用の比率目標を設定するとともに、多様な人材が活躍できる機会と育成環境を提供しています。

人権尊重の強化にも取り組んでおり、「人権の尊重は自社だけで完結させるものではなく、サプライチェーン全体に広げていく必要があります」と久禮氏。国内外の取引先にも人権デューデリジェンスを展開し、調査を通じてギャップが明らかになった場合には是正に向けた支援を行うなど、パートナーシップの構築に努めています。

EcoVadisを‟攻め”のサステナビリティ経営に生かす

Niterraグループは2012年、フランスの現地法人が顧客である自動車メーカーからの要請を受け、EcoVadisの評価システムを導入しました。以来、自動車関連、半導体関連、メディカル関連など累計56社(25年10月現在)にスコアカードを共有しています。

外部評価を受審する目的について久禮氏は、「投資家やステークホルダーが重視するESG評価への対応は必須です。同時に当社では、評価項目を通じて自社のギャップを分析し、リスクに先手を打つ‟攻め”のサステナビリティ経営のツールとしても活用しています」と語りました

グループ内のESGガバナンスに課題を感じていた同社は、2025年よりEcoVadisのCorporateプランに移行。これにより、グループ各社のESG対応状況を客観的なスコアで把握・管理することが可能になりました。同社は、独自に行っていた社内調査の工数の削減と、ガバナンス精度の向上を期待しています。

サプライチェーンを含めたESGガバナンスへ

「外部評価機関から回答を求められる項目は、社会の動きや流れに応じて年々変化しています」と久禮氏。同社は、EcoVadisの設問を通じて、グループでのESG対応で不足しているところを洗い出し、必要に応じて全社的な方針への組み込みを行うとともに、ガバナンス体制の改善を図っています。

講演の締めくくりに久禮氏は、EcoVadisの利点について「設問は多いものの日本語で書かれていて解説もついているため、とてもわかりやすい。アカデミー(eラーニング)機能があるので、初心者でも学びながら対応できる点が優れています」と評価しました。

Niterraグループでは今後、取引先も含めたESGガバナンスにEcoVadisの活用を検討しています。「地球を輝かせる企業」として、未来志向のサステナビリティ戦略をさらに加速させていく考えです。

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