オリエント商事のEcoVadis評価の活かし方

オリエント商事株式会社 代表取締役社長 岡野 勝政 様

創業75年以上の歴史をもつ老舗商社であるオリエント商事株式会社。建設資材や工業製品、空調ダクトなどを得意とし、大手重工業や自動車メーカー、コンビニチェーンなどの日本での発展に寄与してきました。

長きにわたり顧客の信頼を集めているのは、資材の調達だけでなく、その管理や物流までを担い、顧客の業務に最適なシステムを構築しているから。顧客のニーズを先読みし、「欲しかった」と言われるようなサービスを提案する「付加価値創造企業」であることを最大の強みとしています。

その同社が現在、特に力を入れているのがサステナビリティへの取り組みです。2022年に初めてEcoVadisの評価を受審し、2年連続でブロンズメダルを獲得しています。多彩な製品を仕入れる商社が第三者機関のサステナビリティ評価を受けることの難しさ、それでも取り組む意義について、お話をうかがいました。

 ——EcoVadisのサステナビリティ評価を受審されたきっかけをお聞かせください。

当社は、多店舗展開しているコンビニチェーンやドラッグストアなどのお客様に対し、新店出店の際の建築資材の提供を事業のひとつの柱としています。そうしたお取引先から「Ecovadisの評価を受けてみてもらえないか」という要請があったことがきっかけです。

近年はお客様のサステナビリティへの意識が高まり、環境関連の法令の遵守はもちろん、エシカルな商品へのニーズをお聞きする機会も増えています。そのため当社では、企業価値を高めるためにもサステナビリティへの取り組みは重要であると考え、さまざまな取り組みを行っていました。その取り組みのレベルが第三者機関からみてどうであるのか。現状の立ち位置を知りたいとの思いもあり、EcoVadisの評価受審を決めました。

 

——それまではどのようなかたちでサステナビリティ推進に取り組まれていたのですか。

当社はISO14001を2007年に取得しており、社会的責任に関する国際規格ISO26000をベースにCSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)活動に取り組んできました。

具体的には、「ISO14001事務局​​」「BCP(事業継続計画)事務局​​」「衛生委員会」を立ち上げ、それらを統括する「CSR委員会」を発足し、定期的に会議を開催していました。

CSRを掲げ、社会への貢献を考えてきたわけですが、サステナビリティはより広い視野をもった概念であり、さまざまな課題に対し、いかに自分たちが率先して取り組んでいくかが問われるようになっています。

サステナビリティの枠組みに合わせて取り組みをレベルアップしていきたいと考えていたときに、タイミングよくEcoVadisの評価を受審することができました。

 

——評価の受審にあたって大変だったことは何でしょうか。

 EcoVadisの評価を受けるにあたっては、「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4つのテーマについて、詳細なエビデンスを示す必要があります。そのエビデンスを取りまとめるところが一番大変でした。

例えば「労働と人権」であれば、残業時間の現状などは管理部門のデータを見ればすぐに把握できます。一方で、「持続可能な資材調達」について、当社が取り扱う工業製品のCO2排出量を知るためには、各営業担当者を通じて仕入れ先から各製品の資料を収集する必要があります。

まずはEcoVadisからの質問票をCSR委員会の担当者と営業担当者とで共有し、回答ができるものか、できないものかを一緒に選別するところから始めました。そして回答できるところをまずは集中的に確認し、エビデンスの収集にあたりました。

 

——初年度からブロンズメダルを獲得されていますが、それはこれまでのCSRの取り組みが実ったということでしょうか。

そうですね。ISO14001の審査を毎年受けていますので、日常業務に環境関連のデータ収集が組み込まれており、それをエビデンスとして生かすことができました。また、東京都中央区の「ワーク・ライフ・バランス推進企業」や、東京都の「家庭と仕事の両立支援推進企業」の認定にあたり作成していた資料なども役に立ちました。

一方で、当社は取り扱う製品の品質管理業務なども行っていますが、サステナビリティについてお客様が要求されていない項目には対応していないという現状がありました。当社は商社であり、実際に製造をしているわけではありません。必要なデータはメーカーに依頼することになります。CO2排出量等、重要なデータの測定を自社で行っていないという難しさがあります。

こうしたサステナビリティ評価の受審に限らず、CO2排出量の開示のニーズなどお客様の関心が高まっている分野でもありますので、今後は製品のサステナビリティ情報を当社が取りまとめて、その内容も含めて提供できるようになっていく必要があると考えています。それが実現すれば、付加価値提案企業としてさらなる飛躍が遂げられるはずです。

 

——サステナビリティへの取り組みを社員に周知するために、何かされていることはありますか。

 当社では2023年に、サステナビリティ推進に社員全員で取り組んでいく方針を打ち出しました。先述の「ISO14001事務局」「BCP事務局」「衛生委員会」に加え、「SDGs事務局」を新たに発足し、社員にはこのどれかに必ず参加してもらうようにしています。

例えば、SDGs事務局であれば、月1回のミーティングに参加して、SDGsに対する理解を深めたり、他の社員にどうすればSDGsの理解を促せるかを考えたり、当社がSDGsに貢献するためにはどういった取り組みを行っていけばよいかを議論したりしています。

これにより、限られた人間が主導していたときよりも、サステナビリティへの関心が高まり、自分事として取り組んでいくという意識が定着してきたように感じています。

 

——仕入れ先に高いサステナビリティ基準を要求することもあるでしょうから、社員全員が取り組んでいるという姿勢は大切ですね。

おっしゃる通りで、仕入れ先に対してサステナビリティへの取り組みを求める際には、われわれ自身が高い問題意識をもち、地道に取り組む姿勢が重要です。自分たちが物を浪費していたり、環境を顧みない活動をしていたら、いくら表向きにはやっているように見せても信頼は得られません。

当社のオフィスでは、SDGsの17の目標のうち、われわれの日常業務で関わりのある項目についてステッカーを掲示して周知しています。例えば、電気のスイッチのところに「SDGsの目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と書いたステッカーを貼るなどです。小さなことではありますが、こうした日々の心がけから行動を変えていくことで、自信をもって発信できるように心がけています。

 

——EcoVadisの評価を受けたことで、どのようなメリットがありましたか。

 お客様のサステナビリティ推進に貢献する商品に対し、より一層、自信をもってご提案できるようになりました。

当社では「eneFAN(エネファン)」という業務用の省エネ大型ファンを取り扱っています。これは倉庫や工場などの広い空間でも、天井に設置することで空気を循環させ、そよ風のような自然な風をつくる商品です。労働環境の改善や熱中症リスクの低減、省エネやCO2排出量削減などに貢献できる点が特徴ですが、EcoVadisの評価を受けたことにより従業員のサステナビリティ意識が高まり、その重要性に注目した提案が以前にも増してできるようになりました。

その結果、お客様からも「サステナビリティ推進に関する取り組みが行えた」と非常に好評で、売り上げを伸ばしており、現在では一部門の中核を担う商品となっています。

また、採用におけるメリットも感じています。近年の人手不足の状況においても、当社は比較的ご応募がいただけているほうではありますが、特にサステナビリティへの取り組みについて若年層の反応がよく、実際の応募につながっていると聞いています。

そのほか、社員のエンゲージメントを経営層がより意識するようになりました。サステナビリティ推進の一環として、働きやすい環境づくりを行うために、衛生委員会が各社員の残業時間や有給取得率などの調査を行いました。それにより社内のニーズが明らかになり、実際に有給休暇がよりとりやすくなるよう制度を見直したり、リフレッシュ休暇を導入したり、産休育休介護休を充実させたりという改革を行っているところです。

 

——2年目もブロンズメダルを獲得されていますが、取り組みとして変わった点はありましたか。

 EcoVadisの審査では、方針・施策・実績について評価がなされます。しかし当社がこれまで行っていたCSR活動では、さまざまな課題に対する取り組みについて、どういう方針のもとに、どのような手順で実施し、具体的にどういった効果が得られたのかが明確になっていませんでした。

そこで2年目は、EcoVadisのフィードバックを参考に、多岐にわたるサステナビリティの項目のなかで当社が取り組むべき課題は何であるかを明確にし、優先順位をつけて整理するということを行いました。そして「サステナビリティ基本方針」「人権方針」「倫理方針」「調達方針」「環境方針」「情報セキュリティ基本方針」の6分野に対する当社の基本方針を明文化し、当社のWebサイトにも掲載しました

このように体系立てて取り組むようになったことで、2年目のスコアアップにつながったのではないかと考えています。

 

——これからサステナビリティ推進に取り組みたいと考えている企業に、アドバイスがありましたらお聞かせください。

 サステナビリティと一口に言っても、範囲が広く、取り組むべき課題は多岐にわたります。広く浅く取り組んで、どれも成果が出ていないという事態に陥らないことが重要です。当社では社会の進む方向を見極め、お客様のニーズをよく聞きながら、自分たちができることとできないことを整理し、まず率先してやるべきことから確実に取り組んでいくことを意識しています。

 

——サステナビリティ推進について、貴社の今後の展望をお聞かせください。

 これからはサステナビリティへの取り組みが仕事につながる時代です。当社がサステナビリティ推進の取り組みを行うことで、当社のみならず、お客様や仕入れ先、ひいては社会の利益につながるよう、周囲といかに協力して取り組んでいけるかが重要になっています。

当社はお客様の要請をきっかけにEcoVadisの評価を受審しましたが、今後はより能動的に、仕入れ先に対してサステナビリティの具体策を提案するといった働きかけなども行っていきたいと考えています。そのように輪を広げていけば、社会の要請に沿った会社同士の取り引きが実現し、Win‐Winの関係が構築できるのではないかと思っています。

著者について

‏‏JA‎ E‏‏‏‏coVadis ‏‏JA‎

EcoVadisは、世界のビジネスにおいて最も信頼されるサステナビリティ評価の提供をミッションとする会社です。専門知識とエビデンスに基づく独自の評価システムにより、企業とその取引先のサステナビリティパフォーマンスを監視し、改善のための提案を行っています。EcoVadisによる評価は200の業種と175カ国の状況を網羅しており、実用的なスコアカードやベンチマーク、脱炭素に向けたアクションツール、インサイトを通じて、環境的で社会的かつ倫理的な改善を促進します。

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初めてEcoVadisの評価を受審した2022年、同社はブロンズメダルを取得しています。翌2023年には評価結果が大幅に改善し、シルバーメダルを獲得しました。