『化粧品の力を信じ、より美しい世界をつくる』というミッションの下、化粧品原料の輸出入販売やODM(提案型化粧品受託製造販売)事業を手がける住商コスメティクス株式会社。同社は住友商事グループの化粧品素材事業における本社機能を持っており、欧州、北米、南米のグループ会社と共に、グローバルにビジネスを展開しています。
初めてEcoVadisの評価を受審した2022年、同社はブロンズメダルを取得しています。翌2023年には評価結果が大幅に改善し、シルバーメダルを獲得しました。同社管理業務部 部長の紫牟田(しむた)慶輝氏、化粧品素材事業部の住野太祐氏に、サステナビリティのグローバルスタンダードや、EcoVadis評価の活用についてお話をうかがいました。
——まずは、貴社のサステナビリティへの取り組みについて教えてください。
紫牟田:弊社は2019年に化粧品事業に特化した会社として住友商事のグループ会社からカーブアウトする形で設立しました。サステナビリティについては、海外の住友商事グループの化粧品事業会社が先行して取り組んでいました。EcoVadisの評価では、当グループのSummit Cosmetics Europe社(フランス)がプラチナメダル、Presperse社(アメリカ)とSummit Cosmetics LATAM社(ブラジル)はゴールドメダルを既に獲得していました。ですから弊社としては、サステナビリティを推進することも、EcoVadisの評価を受審することも、「化粧品に関するビジネスを行うにあたっては当然なこと」という感覚でした。
私が2021年にチームに参加した後、まず着手したのがSDGsへの取り組みです。各部でディスカッションしてもらい、共通するテーマを洗い出して、重点的に取り組む項目を決めていきました。「安全で環境に配慮したプロダクトを取り扱っていることを積極的に発信する」「資源を有効活用する」「サプライチェーンにおいて人権を尊重する」など、社内で草の根的な活動を始めたのです。
住商コスメティクス株式会社管理業務部 部長 紫牟田 慶輝氏
——化粧品業界において、サステナビリティを積極的に推進することの意義について、お考えをお聞かせください。
紫牟田:グローバル展開する大手化粧品メーカーでは、時代の流れを先取りする形で原材料から最終消費者に届くまでの過程を可視化し、商品の付加価値を高めようとしているのではないかと思います。
住野:営業活動の観点からも、化粧品業界でのサステナビリティ推進は、ほかの業界に比べて先行していると感じます。安全・安心な原料を求める消費者意識の高まりを受け、ミッションの中でサステナビリティを掲げる企業が増えているのです。
——EcoVadisについて、どんな印象を持っていましたか。
住野:海外のグループ各社とやり取りする中で、受審する以前からEcoVadisの社名は聞いていました。サステナビリティの第三者評価機関はほかにもありますが、化粧品業界、特に弊社とお取引のあるお客様からはEcoVadisの名前が上がる機会が多く、弊社としても受審はマストだと考えていました。
——評価を受審するにあたり、苦労したことはありますか。
紫牟田:管理部門と事業部のメンバーがタスクフォースを組み、評価受審に臨みました。EcoVadisの質問票を読み込んでいくと、営業活動のみならず、社内規程や教育・研修を始めとした各種制度に関連する多岐にわたる質問が記載されています。例えば社員が受講した研修の時間など、これまで管理されていなかった数値を整理し、ベースとなるデータを作る作業は大変でしたね。
1回目の受審では、EcoVadisというフィルターを通して、自分たちが取り組んでいることを一つ一つ丁寧に振り返っていきました。結果、サプライヤーとの関係や、サステナビリティに関する社内の意識づけなど、具体的な課題が見えてきたのです。EcoVadisからのフィードバックを参照しながら、1年かけて翌年の受審に向けた準備を進めました。
住商コスメティクス株式会社 化粧品素材事業部 住野太祐氏
——2回目の受審では評価結果が大幅に改善しています。具体的に、どんな取り組みを行ったのでしょう。
住野:海外グループ会社の事例にヒントを得て、「持続可能な調達」については、特に重点的に取り組みました。弊社の仕入れ先である化粧品素材のサプライヤーが、CSRについてどのような取り組みをしているか、調査を行ったのです。EcoVadisの評価を受審している企業に対してはスコアカードの共有を依頼し、受審していない企業に対しては、弊社独自の質問票を送って回答を依頼しました。海外のサプライヤーも多いので、独自の質問票は英語と日本語の両方で作成し、なぜサステナビリティに取り組んでいく必要があるのか、日々の業務のかたわら1社ずつ丁寧に説明しました。最終的には、EcoVadisのスコアカードと弊社独自の質問票を合わせ、取引のあるすべてのサプライヤーから回答いただくことができたのです。1年がかりで取り組んだこのプロジェクトの結果、持続可能な調達に関する評価が向上し、20点以上スコアが改善しました。また、1回目の受審で弊社の強みであると分かった倫理の項目については、コンプライアンス関連規程、ガイドラインのアップデートおよび社内啓発活動を計画的に行うことで、さらなるスコアの改善に繋げました。
——サステナビリティ推進に取り組みはじめた前後で、どのような変化があったでしょうか。
紫牟田:EcoVadisの評価受審に向けた取り組みを通じ、マネジメント層をはじめ会社全体でサステナビリティについての意識が高まっています。サステナビリティというと、エネルギー消費の削減、環境への配慮などをイメージしがちですが、コーポレートガバナンスも広義のサステナビリティだと思います。サステナビリティに関係のない社員はひとりもいないのだという認識が、社内に浸透しつつあります。
住野:各国のグループ会社と定期的にCSRミーティングを行う中でも、EcoVadisの評価が国境を越えた「共通言語」になり、サステナビリティについて共に学び、共に推進していくという一体感につながっていると思います。海外の事業会社に続き、弊社もEcoVadisから高い評価を得たことで、主にヨーロッパのお客様との取引において、これまで以上にグローバルなプロジェクトのパートナーとしてお声がけいただく機会が増えるなど、お客様からの信頼が高まっています。私たちはサプライヤーを代表して営業活動をさせていただいているので、弊社が信頼されることは、サプライヤーにとってもメリットが大きいのです。
2023年には弊社のグループ会社のPresperse社(アメリカ)が、EcoVadisのグローバルイベント World Tour Americasにパネリストとして登壇しました。グループ全体でサステナビリティを推進することで、化粧品業界内でのプレゼンスが高まり、業界をリードしていると感じます。
パリで開催された展示会での住商コスメティクス株式会社のグループブース
——今後EcoVadisの評価受審を考えている企業に向け、ぜひメッセージをお願いします。
紫牟田:私たちは、高いスコアを獲得するために特別なことをしているわけではありません。受審しはじめて間もないこともあり、あえて外部の手を借りることなく、これまでの活動を自分たちの手で地道に整理する作業を続けてきました。それが結果的に、サステナビリティへの理解を深め、社員の意識を高めることにつながっています。自社の取り組みを過不足なく理解する上でも、第三者機関による評価は有益ではないでしょうか。
——今後のサステナビリティ推進について、貴社の展望をお聞かせください。
住野:Ecovadisの取り組みを通じ、弊社のように規模が大きくない会社でも、前述したサプライヤーへの調査のように、サステナビリティに資する諸施策の推進ができるということが分かりました。サステナビリティについては、現在、海外のグループ会社の取り組みが先行しているので、弊社もこれに続くようさらに力を入れていきたいです。
紫牟田:現在は多くのお客様がサステナビリティに配慮した商品を求めています。弊社としてはニーズに応えていきたいと思いますし、今後もEcoVadisの評価を活用しながら、サステナビリティ経営を推し進めていくつもりです。
著者について
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