本レポートでは、2025年11月25日に開催されました「日経BPコンサルティングセミナー」でのKDDI株式会社 コーポレート統括本部 購買本部 購買統括部 サステナブル調達企画G グループリーダー 新谷氏のご講演に基づき、同社が複雑化するサプライチェーンの中でどのようにサステナビリティ経営を推進し、ネットゼロ達成に向けたエンゲージメント戦略を築いているかを紹介します。
1. KDDIの事業概況とサステナビリティ経営の核心
KDDIは、モバイルネットワーク(au, UQ, povo)から法人向けITソリューション、グローバルなデータセンター事業(TELEHOUSE)まで多岐にわたる事業を展開しています。 同社が掲げる「サステナビリティ経営」では、環境価値を基盤に社会価値と経済価値を循環させることで、パートナー企業とともに持続的な成長と企業価値の向上を目指していると述べられました。
複雑化するサプライチェーンとネットゼロ目標 5G・Data Driven・生成AIをコアとした「サテライトグロース戦略」により事業成長を加速している一方で、サプライチェーンの複雑性は高まっています。KDDIは2040年までにネットゼロを達成することを掲げ、サプライチェーン全体を網羅するスコープ3排出量までを追跡している点を戦略の特徴として挙げられました。
2. サプライチェーン管理の「必須」化と背景
新谷氏は、サプライチェーン管理が不可欠となった背景として、市場と規制の急速な変化に触れられました。
-
規制・制度化の波: SSBJやCSLDといったサステナビリティ関連の規制化が進み、「取り組むこと」が企業の評価に直結する時代になったと指摘されました。
-
サプライチェーン全体での取り組み加速: サプライチェーン全体で環境・人権に関する取り組みが加速しており、取引先に対する要請も高まっていると述べられました。
-
ネットゼロ達成の鍵: KDDIのスコープ3排出量のうち、原材料調達などに当たるカテゴリー1と2が多くを占めるため、ネットゼロ達成にはサプライヤーの協力が絶対に必要であると強調されました。
同社は、環境・人権への取り組み抜きに企業が評価されない、ハードローへの移行が予測される時代において、サプライチェーン全体での労働、人権、環境、倫理の管理が必須であるとの強い認識を示されました。
3. 競合他社との協調:業界全体での基準底上げ
サプライチェーン管理という分野において、NTT、ソフトバンク、KDDIと「協調領域」を構築し、共同でのサプライチェーンサステナビリティ活動を推進していると説明されました。
-
共通アセスメントの実施: 3社が共同で作成したSAQ(Supplier Assessment Questionnaire)を導入し、取引先に回答を求めています。基準点を設けてその評価結果にフィードバックを行うことで、効率的に取り組みを推進しているとのことです。
-
共同開発ツールの提供: 3社で協力し、「サステナビリティハンドブック」や「GHG排出量可視化ハンドブック」、「スコープ3算定ツール」などを共同開発・提供することで、取引先の負担軽減と能力向上を支援していると述べられました。
-
共同監査: 取引先の負担を減らすため、個別の監査に代わり、共同で行う監査を実施する取り組みも進めていると紹介されました。
4. EcoVadisを活用したエンゲージメントと「直接対話」の力
KDDIは、取引額上位90%を「重要取引先」と定義し、サステナブル調達の活動対象としています。同社は3年前からEcoVadis(エコバディス)を採用し、重要取引先のEcoVadis受審率は今年度80%を目指していると報告されました。
EcoVadisのメリット:見えないリスクへの最短アプローチ 新谷氏は、EcoVadis導入の最大メリットは「見えないリスクへの最短アプローチ」であると明確に述べられました。
-
「見えないリスク」の可視化: 過去、共通SAQでは基準点を超えていた取引先が、翌年のEcoVadis受審時に基準点未満となるケースが見られました。KDDIは、このスコアの差こそが自社では把握しきれない潜在的なリスク(見えないリスク)であると特定しました。
-
客観的なレーティング: 17万社に及ぶ豊富な実績と、専門のアナリストによる分析に基づいているため、評価の客観性が非常に高いと説明されました。
KDDIとしては、重要取引先についてはより客観的な評価が得られるEcoVadisの受審を強く推奨しています。
課題解決のための個別ヒアリング KDDIは「直接対話」を重視し、サプライヤーエンゲージメントの強化に努めています。ヒアリングの訪問対象は、以下の基準で検討されています。
-
EcoVadisの基準点(45点)未満の取引先
-
EcoVadisの4つのカテゴリーのいずれかで基準点未満の企業
-
初めてEcoVadisを受審した企業 など
単に総合点が低いだけでなく、特定の分野で課題を持つ企業にも焦点を当て、担当チームがカスタマイズした資料を用いてきめ細やかなサポートを行っています。
5. 展望:グローバルな広がりとサプライチェーンの深掘り
今後のサプライチェーン管理の取り組みとして、以下の検討案を挙げられました。
-
グローバルな連携強化: 欧州の通信企業コンソーシアムであるJAC(Joint Audit Cooperation)への加盟。欧州のトレンド情報をいち早く把握し、監査の効率化を進めることを検討しているとのことです。
-
アセスメント拡大とLow-Tier監査の検討: 重要取引先にとどまらず、サプライチェーンのより深い階層(Tier 2、Tier 3など)へのアセスメントや監査を拡充し、リスク管理の徹底を目指す必要性についても認識を示されました。
新谷氏は、このサステナブル調達の分野は、競合他社との「協調」と取引先との「協力」が不可欠であり、日本全体のサステナブル調達推進に寄与したいと締めくくられました。
講演動画
本レポートで紹介したKDDI 新谷氏(コーポレート統括本部 購買本部 購買統括部 サステナブル調達企画G グループリーダー)の講演動画は、こちらのリンクからご覧いただけます。
EcoVadisに関するお問い合わせ
貴社のサステナブル調達戦略やEcoVadisの導入に関するお問い合わせは、こちらのフォームよりお気軽にお問い合わせください。










