サプライヤーのサステナビリティ・モニタリング・ソリューション選定時に 必要な5つの視点

かつてない混乱が続くなか、サプライチェーンが直面するサステナビリティリスクの範囲はますます広がりつつあります。これにうまく対処しなければ、オペレーションコストの増加や金銭的なペナルティのほか、長期的な風評被害にさらされる可能性もあるでしょう。2021年のバロメーターレポートにもあるように、リスク管理にとどまらずサプライチェーン全体のサステナビリティを積極的に推進する企業は、収益を伸ばし、従業員と顧客のロイヤルティを高め、業界の変革にも貢献しています。

多くの企業がサプライチェーンのサステナビリティを向上させるべく努力を重ねていますが、スムーズな連携がとれておらず、重要な課題が見落とされるケースが生じています。また、サプライヤーもリクエストに対して十分に対応できなかったり、過度の要求を強いられたりすることがあり、さらには取り組みが重複してしまっていることもあるようです。
一方で、先進的な調達部門は、こうした問題の解決には統合的かつ全体的なアプローチが必要だと感じはじめています。そのアプローチとは、サプライヤーのサステナビリティをモニタリングするプログラムの一元化です。これによって、リスクを事前に特定できるだけでなく、サプライヤーがサステナビリティの改善に着手・推進できるようになります。近年では、持続可能な資材調達の仕組みを効率的に構築するため、さまざまなソリューションが登場していますが、どれもが同じような機能を備えているわけではありません。

この記事では、サプライヤーのサステナビリティ・モニタリング・ソリューションについて、選定時に考慮したい5つのポイントをご紹介します。

ポイント1:幅広い業種・地域のリスクに対応できるか

どのような業種でも、調達品目は数十から数百に及びます(間接材を含む)。それぞれのサステナビリティリスクをすべて把握するのは難しいでしょう。製造業における労働リスクや化学産業における環境リスク、採掘業における倫理リスクなど、業種によってその内容は大きく異なります。さらに、それぞれの業界に独自の規制が設けられており、地域ごとに規制状況がかなり異なっているケースも見られます。

サプライヤーのサステナビリティパフォーマンスを評価・モニタリングする効果的なソリューションを選ぶ際には、こうした複雑な状況を考慮できているかどうかが重要なポイントとなります。また、企業はサプライチェーンのリスクに優先順位をつけたうえで、さまざまな業界や国のサプライヤーに影響を及ぼす、急な規制変更にも対応できるツールを用意する必要があります。例えばEcoVadis IQ Plusは、サプライベース全体の倫理的、社会的、環境的リスクをマッピングし、集中して関与・監視する必要があるハイリスクなサプライヤーを見極める、予測知能を備えた情報収集・分析機能を提供しています。

ポイント2:サステナビリティに関するトピックを網羅して評価できるか

炭素削減などのテーマは企業にとって喫緊の課題となっていますが、新型コロナウイルスの感染拡大によってサステナビリティ課題の相互の関連性はさらに深まり、包括的に取り組む必要性が強まっています。企業には、自社の事業活動や事業拠点の問題に目を向けるだけでなく、サプライチェーン全体のサステナビリティリスクについても考慮する姿勢が求められます。

効果的なサステナビリティ・モニタリング・ソリューションには、現代奴隷から差別の禁止、製品の利用や使用後の処理に至るまで、多岐にわたるリスクを評価できる基準が必要です。また、企業に対してさまざまな問題に関する報告を要求し、それを推進する基準やイニシアチブが増えている点にも配慮しなければなりません。例えば、EcoVadisレーティングではあらゆるリスクを確実に評価できるように、「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4つの主要テーマにまたがる21のサステナビリティ基準を考慮しています。また、GRI(Global Reporting Initiative)や国連グローバル・コンパクト、ISO 26000などの主要な規格のほか、500を超えるサステナビリティ関連規制にも準拠しています。

ポイント3:普遍的な比較が簡単にでき、実用的なインサイトを提供しているか

サプライヤーをただ評価するだけでは、十分とはいえません。評価データをサステナビリティの主要テーマの改善に役立てるためには、調達部門とサプライヤーがその内容を理解し、比較・実行できるようにデータが整理されている必要があります。「同業他社に比べ、サステナビリティの観点でサプライヤーはどのような成果を上げているか」「業界や地域の基準はどうなっているのか」「パフォーマンスは向上しているか」。リスクを効果的に管理し、改善の機会を見出せるように、調達部門はこうした疑問に答えられなければなりません。

サステナビリティパフォーマンスを定量化し、評価やスコア化といったベンチマークにつながるソリューションを導入することで、調達部門とサプライヤーは、重要度が低く散発的な改善しか生み出さない「コンプライアンスの罠」を回避できます。そして、そこで得られたインサイトを活用することで、有意義かつ永続的な影響を受けつづけられるでしょう。また、ベンチマークによる知見をもとに、バイヤーが目標値やしきい値を設定してサプライヤーの関与を促し、自ら成果を管理できるように支援することも可能です。例えば、EcoVadisのソリューションを活用すれば、バイヤーがサプライヤーと協力して是正措置計画を立てて進捗を管理するだけでなく、大きく改善した企業を表彰することもできるようになります。

ポイント4:既存の調達プロセスとどれだけ簡単に統合できるか

組織の調達機能において、サステナビリティを重要事項として位置付けるためには、「調達」「オンボーディング」「入札・提案依頼」「SRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)」「契約および年次レビュー」など、すべての調達プロセスにその視点を取り入れなければなりません。

サプライチェーンのデジタルトランスフォーメーションが加速するなか、これを実現するためには、主要なメトリクスやインサイトを既存のSCM(サプライチェーンマネジメント)ソフトウェアスイートに統合できるソリューションの導入が求められます。そのソリューションとは、例えば「SAP Ariba Risk Aware」「Coupa Spend Management」「Synertrade」「Jaggaer」などのERP(エンタープライズリソースプランニング)ソフトウェアや、時間とコストの節約を目的としたリスク管理用アプリケーションと統合できるものを指します。

ポイント5:プログラムおよびチェンジマネジメント、オンボーディング、サプライヤーの改善促進のためにどのようなサービスが用意されているか

サステナビリティ・トランスフォーメーションの実現までは、長い道のりです。世界トップクラスの評価・モニタリングプラットフォームであっても、サプライチェーン全体のサステナビリティリスクに取り組む組織のアプローチを単体で変えることはできません。サステナビリティを深く浸透させるためには、経営プロセスに変革を起こし、新しい戦略を統合して、サプライヤーの能力を高める必要があるでしょう。
 

また、社内のプログラムマネジメントについての専門知識を提供するだけでは不十分です。サステナビリティに関する最適な戦略を提案し、志を同じくする取引先のネットワークを持つソリューションプロバイダーを探しましょう。例えば、EcoVadisアカデミーのように、サプライヤーの能力向上を支援するプラットフォームがあると理想的です。EcoVadisアカデミーのプラットフォームでは包括的なeラーニングコースが提供されており、サプライヤーがさまざまなサステナビリティテーマに取り組めるようになっています。こうしたリソースを上手に活用すれば、サプライチェーン全体に大きな影響を与え、さらなる価値を引き出すことができるでしょう。

最後に

サステナビリティマネジメントおよびリスクマネジメントには、多様なアプローチが考えられます。最も効果的なのは、業界や地域に制限されることなくサプライヤーをモニタリングし、関与させるために必要なメトリクスと実用的なインサイトを提供できるソリューションの活用です。具体的には、「サプライヤーのパフォーマンス比較」「機会の特定」「新しい取引先とのコンタクト」が可能なオンラインプラットフォームで、調達プロセスにメトリクスとインサイトを組み込めるものがよいでしょう。「持続可能な資材調達の計画」の効果は、これを支持し、主導する人がいてはじめて発揮されるものです。その実現には、自社内とサプライヤーの両方で構築可能なソリューションを選ぶことが重要となるでしょう。

持続可能な資材調達の構築に関するお悩みやお困りごとがございましたら、EcoVadisまでお気軽にお問い合わせください。EcoVadisが提供するソリューションの詳細についてご案内いたします。
 

このブログ記事は、ホワイトペーパー「Five Essential Criteria For Selecting A Supplier Sustainability & Risk Monitoring Solution.(英語資料)」に基づいて執筆され、2022年4月29日に公開された記事を翻訳したものです。

著者について

‏‏JA‎ E‏‏‏‏coVadis ‏‏JA‎

EcoVadisは、世界のビジネスにおいて最も信頼されるサステナビリティ評価の提供をミッションとする会社です。専門知識とエビデンスに基づく独自の評価システムにより、企業とその取引先のサステナビリティパフォーマンスを監視し、改善のための提案を行っています。EcoVadisによる評価は200の業種と175カ国の状況を網羅しており、実用的なスコアカードやベンチマーク、脱炭素に向けたアクションツール、インサイトを通じて、環境的で社会的かつ倫理的な改善を促進します。

Twitterをフォロー LinkedInをフォロー ウェブサイトを訪問する ‏‏JA‎ E‏‏‏‏coVadis ‏‏JA‎のコンテンツをもっと見る
以前の記事
EcoVadis、2023年度の「フレンチテック・ネクスト40」の認定企業に
EcoVadis、2023年度の「フレンチテック・ネクスト40」の認定企業に

2023年2月、EcoVadisは「フレンチテック・ネクスト40」に選出されました。 「フレンチテック・ネクスト40/120」は、フランスの経済・財務・復興省が主導するミッション・フレンチテックが2019年に開始し...

次の記事
IAEG、EcoVadisと契約を締結。航空宇宙産業のサプライチェーンにおけ るサステナビリティパフォーマンスの改善を促進
IAEG、EcoVadisと契約を締結。航空宇宙産業のサプライチェーンにおけ るサステナビリティパフォーマンスの改善を促進

航空宇宙の世界的な業界団体「International Aerospace Environmental Group(IAEG:国際航空宇宙環境グループ )」がEcoVadisと契約を締結したことを発表しました。 こ...