サプライチェーン・デューデリジェンスが義務化される時代が到来しています。ドイツで最近制定されたサプライチェーン・デューデリジェンス法(Lieferkettengesetz / LkSG 以下、ドイツサプライチェーン法)やEUで間もなく発効されるコーポレートサステナビリティ・デューデリジェンス指令案(以下、CSDD指令案)などの法律のもと、企業はこれまで以上に自社のサプライチェーンを綿密に調査し、環境・人権問題を体系的に特定して軽減措置を行い、報告することが求められます。しかしほとんどの企業では、こうした法律が求めるレベルで、サプライチェーンの精査や透明性の開示に対応する準備が整っていないのではないでしょうか。この記事では、進化したデューデリジェンスが企業にどのような影響をもたらすのか、そして企業が法令を遵守するための支援をEcoVadisがどのように行っているのかを見ていきます。また、当社のソリューションがコンプライアンスの取り組みを効率化させるだけでなく、企業のESG目標達成やステークホルダーへの価値提供、さらにはサプライチェーン全体にポジティブな影響をもたらすことについてもお伝えします。
進化し続けるデューデリジェンスの現状
グローバルサプライチェーンにおいて、サステナビリティに関するリスクは増加の一途をたどっています。現代奴隷制度の悪化はかつてない水準にまで達し、環境への影響は2026年までにグローバル企業に1200億ドルの損失をもたらすと予測されるほどです。
それにもかかわらず、多くの企業では対応が遅れています。企業人権ベンチマーク(Corporate Human Rights Benchmark)は先ごろ、世界の大企業の半数近くが、バリューチェーンにおける人権や環境問題の軽減はおろか、特定すらできていないことを明らかにしました。こうした現状を受けて各国政府は企業が上流で行う有害な商習慣についての責任を問うための法整備を進めており、自発的な枠組みや報告に重点を置いた英国現代奴隷法(Modern Slavery Act)などをもとに、デューデリジェンスを義務づける新たな流れが生まれています。これらは、より多くの企業にサプライチェーンにおけるサステナビリティの課題に取り組むことを求めています。そのため、資材調達チームはより多くの要求に対応する必要が出てくるでしょう。
世界のサプライチェーン・デューデリジェンス法
緑:採用
青:提出・審議中
橙:法的拘束力なし
カナダ:S−211:サプライチェーンにおける強制労働、児童労働との闘いに関する法律を制定し、関税率を改正する法案(2023年)
アメリカ:ウイグル強制労働防止法(2022年)
オランダ:児童労働デューデリジェンス法(2020年)、ビジネス行動責任協定(未定)
ノルウェー:透明性法(2021年)
イギリス:現代奴隷法(2015年)
ベルギー:人権デューデリジェンス法(未定)
スイス:紛争鉱物と児童労働に関するデューデリジェンスおよび透明性に係る施行令(2022年)
オーストリア:サプライチェーン法令への動き(未定)
ドイツ:ドイツプライチェーン法(2023年)
EU:CSDD指令案(未定)
オーストラリア:現代奴隷法(2018年)、ニューサウスウェールズ現代奴隷法(2018年)
日本: 責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(2022年)
こうした法制化の動きの最前線にいるのがヨーロッパです。フランスは2017年に企業注意義務法(Duty of Care Law)を導入し、ノルウェーは透明性法(Transparency Act)を2022年に施行しています。また、ドイツは今年初めにドイツサプライチェーン法を制定し、オランダは独自の人権・環境デューデリジェンス(HREDD)法案に取り組んでいます。こうした取り組みを統括しているのがEUのCSDD指令案です。CSDD指令案は、EUにおけるデューデリジェンスの法的な基準を提供し、既存の法律を持つ国に対して同指令の要求事項に合わせることを求めています。ヨーロッパ以外では、オーストラリア、カナダ、米国がサプライチェーン・デューデリジェンスの義務化に向けて決定的な一歩を踏み出しているほか、日本も人権デューデリジェンスガイドラインを発表して企業に欧州基準に備えるよう促しています。こうした傾向は今後さらに加速し、世界中の膨大な数の企業に直接的または間接的な影響を与えることになるでしょう。各法律の詳細については、レギュレーションのページをご覧ください。
企業が備えるべきデューデリジェンス課題の拡大
拠点を持つ場所や業種に関わらず、企業はデューデリジェンスの義務化に向けた準備を始めるべきです。それぞれのニュアンスや具体的な要求事項に多少の違いはあるものの、既存の法律や新たな法律はいずれも、企業の事業やサプライチェーンにおけるESGの課題を特定して軽減措置を行い、報告するための体系的なアプローチを確立することを求めています。ここでは、その一般的なプロセスに加え、対処すべき課題について紹介します。
- リスクマッピングと特定:人権や環境に関するリスクについて、自社の事業とサプライチェーン全体を分析する。例えばノルウェーの透明性法は、企業に対して事業とバリューチェーン上流を含む全体のリスク評価を求めています。
- リスクの検証:サプライヤーレベルでデューデリジェンスを実施し、特定されたリスクを検証する。ドイツサプライチェーン法の対象企業は、マッピングの過程でリスクに関する「事実に基づく知見」が出た場合、サプライヤー評価を求められます。
- リスクの軽減と予防:リスクやネガティブな影響を軽減し、再発を防止するための断固たる措置を講じる。EUのCSDD指令案の適用範囲内にある企業は、サプライチェーンで発生するあらゆる負の影響を特定、管理、防止するために「十分に実証された」措置を講じる必要があります。
- 監視と報告:取り組みの有効性を定期的に評価してアプローチを再調整し、透明性を確保する。
CSDD指令案は企業に対し、年に1度、アプローチの有効性を評価し、デューデリジェンス戦略と宣言を公表することを義務付けています。
コンプライアンスへの取り組みを合理化するEcoVadisの手法
これらのプロセスを構築し、日々進化する法規制を把握するための専門知識やリソースを社内で用意するのは難しい企業も多いのではないでしょうか。EcoVadisは10年近くもの間、あらゆる規模や業界の企業が、さまざまな基準や要件を満たすための支援を行ってきました。当社のアプローチは、デューデリジェンスの取り組みを合理化して現行法を滞りなく遵守するとともに、新たな法律に対する基盤の構築を可能にします。ここでは、デューデリジェンスへの取り組みを通して、どのようにサポートを行っているかを紹介します。
ステップ1:サプライチェーンのリスクを特定
サプライベース全体のESGリスクを簡単かつ迅速に精査します。数日のうちに特定できます。
ステップ2:サプライヤーパフォーマンスの評価と理解
重要、高リスク、高支出などの選択したサプライヤーに対し、適切なサステナビリティ評価を実施します。
ステップ3:改善を推進
ツールやeラーニングコースを提供するEcoVadisのプラットフォームを通じてサプライヤーの改善を推進します。
ステップ4:監視と報告
強力なレポート機能でサプライヤーの法令遵守と進捗状況を監視し、追跡します。
コンプライアンスアプローチを推進するEcoVadisのツールとソリューションについては、こちらをご覧ください。
コンプライアンスとその先を見据え、正しいソリューションの選択を
デューデリジェンス法の増加に合わせ、コンプライアンスソリューションも急速に広まっています。しかし、そのすべてが平等に作成されているわけではありません。自己申告や自己評価アンケートなどの方法は、規制当局が求める詳細さやサプライチェーン全体のリスクを可視化する能力に欠けるため注意が必要です。これは、社内での取り組みであろうと外部への委託であろうと同様です。こうした一面的なアプローチはサプライヤーに冗長な作業を強いることが多く、サステナビリティの改善に必要な洞察や指針は得られません。長期的にサプライチェーンのリスクを軽減し、ネガティブな影響を防ぐには、迅速で広範囲な洞察をもとにサプライヤーとの協力を優先的に進めるだけでなく、サプライヤーの業務を簡単かつ効果的に改善できる支援策も必要です。EcoVadisには、このような支援を行うための独自の体制が整っています。
さらに、未来志向型の企業は、より大きな視野を持つべきです。サプライチェーンの不安定化や気候危機が加速する中、コンプライアンスの遵守だけでは十分とは言えません。企業は、多様性や公平性へのコミットメントからネットゼロ目標に至るまで自社のサステナビリティ目標を着実に前進させ、サプライヤーが同様に行動できるよう支援すべきです。適切なソリューションを選択することで、結果的に、コンプライアンス違反による深刻な影響を回避することができます。またそれだけでなく、より持続可能なサプライチェーンへの投資から恩恵を受けることができるのです。
EcoVadisのコンプライアンス推進に対するサポートについて、詳しくはこちらからお問い合わせください。
著者について
Twitterをフォロー LinkedInをフォロー ウェブサイトを訪問する JA EcoVadis JAのコンテンツをもっと見る