「1.5°C目標」を達成するには、世界経済のあらゆるセクターで脱炭素化が必要となります。さまざまな業界の大手企業が、2050年までに、もしくはそれよりも早くネットゼロ達成を公約してはいるものの、その多くが目標に向けて前進できずにいます。一方で、前進している企業には共通点があります。サプライヤーのパフォーマンスを評価する際に、自社のオペレーションの先にまで目を向け、改善を推進するためにサプライヤーと協力している点です。
EcoVadisがカーボンアクションモジュールを発表してから2年が経過しました。現在では200社を超えるグローバル・バイヤーが当社のカーボンパフォーマンス評価を活用し、全サプライチェーンにおける約4万社のサプライヤーを評価しています。これにより、サプライヤーのカーボンマネジメントプラクティスを包括的にベンチマークし、脱炭素化への取り組みを拡大・加速することが可能となりました。EcoVadisは、成長を続けるこのネットワークのカーボンパフォーマンスについての洞察を2年連続で共有してきました。このネットワークは、さまざまな地域、業種、規模の企業で構成されています。全体的なパフォーマンスはまだ比較的低いものの、初めて排出量を算出する初級者から、当社の新しい製品カーボンフットプリント・ソリューションを利用するリーダーまで、多様なサプライヤーがカーボンマネジメントの成熟度(マチュリティレベル)を向上させています。
図1:各国企業のカーボンパフォーマンス分布
*四捨五入の関係上、グラフの合計が100%にならない場合があります。
リーダー
検証済み科学的根拠に基づく目標と、革新的な排出削減対策に裏打ちされた最高レベルのGHG管理システムを持つ。
高水準
包括的なGHG管理システムと、第三者によるデータ検証を含むグローバルスタンダードに沿った報告がある。
中級
公的報告を含む、GHG管理システムの中核的要素がある。
初級
GHG管理システムおよび/または報告慣行のいくつかの要素がある。
不十分
GHG管理システムの要素が最小限または全くない。
EcoVadisのパフォーマンスの世界的分布を見ると、多くの企業が脱炭素化への一歩をまだ踏み出していない、もしくはその初期段階にあることがわかります。現在、評価済みのサプライヤーのうち3分の2以上が最も低いカーボンマチュリティレベルにあり、温室効果ガス(GHG)管理システムの要素がないことを示しています。一方で、初級レベル到達するための初期ステップを踏んでいる企業の数は増加傾向にあり(40%)、19%はカーボンマネージメントのための強固な基盤を築いています。しかしながら、上級レベルと言えるのはわずか3%で、リーダーとしての地位を達成するために必要な脱炭素化の取り組み(SBTi目標の設定や製品レベルでの排出量報告など)を採用しているのは1%に過ぎません。
国によって異なるカーボンパフォーマンス
EcoVadisのデータによれば、カーボンパフォーマンスレベルの国別分布は大きく異なります。持続可能性に対する長年の取り組みにより、北欧諸国は他国に先駆けてカーボンマチュリティを向上させており、脱炭素化へ向けたリーダーシップを獲得し、脱炭素化へ向けたリーダーシップを獲得し、新たな競争環境での優位性を確保しています。フィンランドでは、3%の企業がリーダーとしての地位を確立し(欧州平均の3倍)、「不十分」と評価されたのは20%未満でした。その一方で、ほとんどのヨーロッパ諸国では、およそ3分の1の企業が不十分カテゴリーに属しています。日本では、不十分と初級が67%で、世界平均の77%やフランスの72%よりも下回っています。
しかし、こうした平均値から読み取れるのは、現在起きていることのわずか一部に過ぎません。多くのサプライヤーはカーボンアクションモジュールを使い始めて2年目に入り、再評価を受けたサプライヤーは、ネットワークのベースライン(1評価)を大幅に上回っています。この傾向は、国や業種、企業規模に関係なく、どの企業にも当てはまります。下図に示すように、日本の場合は、不十分と初級レベルの企業の割合が、再評価の結果、67%から48%に減少しました。高水準とリーダーの割合は8%から14%へと、わずか2年で着実な増加になりました。
カーボンパフォーマンス評価の背景にある6つのKPI
マチュリティを向上させるために、企業はパートナーとの気候変動対策の協働から、全3スコープの排出目標設定に至るまで、多岐にわたる脱炭素のためのベストプラクティスの進捗を示す必要があります。現実的な視点を持つ企業は、脱炭素化へのコミットメントを強化し、バイヤーからの増え続ける炭素に関する期待を超えるよう努力しています。特定の地域の企業は、多くの主要な炭素指標における相対的なパフォーマンスにより、すでに競争力が高いと認識されています。私たちのカーボン評価手法で使用・追跡している数十の指標の中から、6つの指標を選び、地域間での比較を行いました。
図2:6つのカーボン指標における各国の相対パフォーマンス
図3:次のカーボンアクションを実践する日本企業の割合
日本におけるカーボンパフォーマンス評価を持つ企業数:1,302社
積極的な規制当局は、全範囲の排出量開示を要求したり、炭素に価格を設定したりすることで、すでに脱炭素化を推進する動きを見せています。EUは、ブロック内に輸入される炭素集約型製品に対する税金として、炭素国境調整メカニズムの導入を計画しています。一方、提案されている企業サステナビリティ報告指令(CSRD)は、EU内で500人以上の従業員を持ち、特定の財務基準を満たす企業に対して、2024年度の事業活動およびバリューチェーンにおける排出量の報告を義務付ける予定です。日本を含む多くの企業は、これらの規制やその他の規制が要求するレベルのカーボンマネジメント・報告システムの構築が必要となるでしょう。
カーボンに関する期待と機会が増大する中、企業は脱炭素化への取り組みを単なるコンプライアンスの観点からではなく、戦略的なビジネスの視点からとらえるようになってきています。積極的な企業は次のように自問すべきです。「野心的な気候変動目標に貢献するために必要な速度で炭素排出を削減するためには、どのようなツールやガイダンスが必要か?」。投資家、消費者、その他のステークホルダーの視点を持ちながら、自社を脱炭素化マップに掲載するには、明確で証拠に基づいた取り組みが必要です。こちらでEcoVadisのカーボンアクションモジュールについて解説しております。ぜひ、皆様のビジネスにお役立てください。
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