持続可能な社会を実現するうえでは、いかにバイヤー企業がサプライヤー企業を巻き込み、サステナビリティの評価・改善のサイクルを回すかが重要な鍵を握る。グローバルに見てサステナビリティへの成熟度がいまだ低いとされる日本企業の取り組みを、エコバディス・ジャパンのバイヤー企業(評価依頼企業)サポートチームはどのように支援しているのか。カスタマーオンボーディングチームリーダーのMatthew Chauveau(マシュー・ショヴォー)とカスタマーサクセスチームリーダーの吉村良子(よしむら・ようこ)に話を聞いた。
マシュー・ショヴォー カスタマーオンボーディングチームリーダー
ー EcoVadisのバイヤー企業サポートチームについて教えてください。
Matthew: 私たちは、オンボーディングを担当する「カスタマーオンボーディングチーム」と、オンボーディング後のサポートを提供する「カスタマーサクセスチーム」の両輪で、バイヤー企業の皆様を支援しています。まずは、EcoVadisの評価の導入が決まったバイヤー企業の皆様に対して、カスタマーオンボーディングチームが基礎的なオペレーションのセットアップなど使い方にフォーカスした支援と、サステナビリティの成熟度に合わせた戦略的なロードマップ設定のサポートを提供します。普段のコミュニケーションはもちろん、資料やワークショップも日本語で対応できる体制を整えています。
各企業の立ち位置に合わせたオンボーディング計画を策定するために、サステナビリティの成熟度の調査をインタビュー・ヒアリングベースで行っており、それがバイヤー企業の皆様の自己評価になっています。また、持続可能な調達プログラムのビジョンやガバナンス、KPIなどの情報を整理して、先行事例やグローバルなベストプラクティスを参考にしながら不十分な点を洗い出し、一緒に戦略を考えます。さらに、評価の受審を依頼するサプライヤー企業の選定も行います。このように、半年間のオンボーディングを実施して基盤を整えた後、カスタマーサクセスチームに引き継ぎます。
吉村良子 カスタマーサクセスマネージャー
ーカスタマーサクセスチームでは、どのようなプロセスを担当されていますか?
吉村 : カスタマーサクセスチームは、調達におけるサステナビリティ推進を担当するバイヤー企業のプログラムマネージャーの方(主に調達部、サステナビリティ推進部などに所属されている方)と連携しながら、サプライチェーンにおけるEcoVadisの展開をサポートしています。サステナビリティパフォーマンスを向上させるうえでは、いかに評価・改善(是正措置計画)・再評価のサイクルをスムーズに回すかが重要です。このサイクルを効率よく回しながら、オンボーディングで設定したロードマップと、持続可能な調達プログラムの成功に必要な戦略マイルストーンやKPIなどを達成できるように、各企業の課題に合わせた支援を提供しています。
ー日本ならではの課題はどんなところにありますか?
吉村: 一番の違いは、日本の企業が置かれている状況だと思います。グローバルでは、どの企業も当然のこととしてサステナビリティに取り組んでいますし、サプライヤー企業も自主的に動いています。一方、日本の企業でもサステナビリティに対する当事者意識は高まっているものの、リソース不足など様々な問題からスピード感をもって取り組むのが難しいときもあり、欧州にはない日本独自の法律などの影響で受審依頼の状況にも違いが見られます。
どのようにしてサプライヤー企業の皆様を巻き込んでいくか、“自分のこと”として捉えたうえで改善活動を行っていただくか。こうした課題は、よくご相談を受けるポイントでもあります。
Matthew: EcoVadisはグローバルでは広く認知されており、日本もこれから拡大していく段階です。バイヤー企業の方が、サプライヤー企業の方にどのようにしてEcoVadisのソリューションの価値を伝えればよいのかだけではなく、そもそもなぜサステナビリティへの取り組みが重要なのかということから、しっかりとご説明する必要があると思っています。
ーどうすればサプライヤー企業の皆様を自然に巻き込むことができるのでしょうか?
吉村 : 事例の共有はやはり効果的です。EcoVadisの評価を受けて、こんな改善活動を行ってプラチナを獲得した、こんなメリットがあったなど、具体的な事例をお伝えするとイメージしていただきやすくなるようです。そうした成功事例を多く持ち、特定の領域に偏ることなくサステナビリティ全般をカバーしているのは、EcoVadisの強みだと思います。
Matthew :グローバルではまだ後れをとっているとの指摘もありますが、日本企業のサステナビリティへの意識はここ数年で急速に高まっています。だからこそ、EcoVadisとしても、日本のバイヤー企業のお客様に対してほかの地域よりさらに手厚いサポートが必要だと考えています。
これまでの経験から、新しいプロセスを取り入れるプログラムの成功は、初期段階の基盤構築(プログラムマネジメントと進め方)によって実現されるとEcoVadisは考えています。導入の初期段階でプログラムマネージャーの皆様と十分にコミュニケーションをとり、成熟度に合わせてカスタマイズしたサポートを提供することが非常に重要です。
吉村 : EcoVadisのカスタマーサクセスチームの役割は、ただサステナビリティ評価のプラットフォームを提供するだけではありません。大きな課題でもある、サプライヤー企業の皆様をどれだけ巻き込んでいけるかを、バイヤー企業の皆様に寄り添って共に考えます。そのときに大切なのは、どれだけ自分自身が“自分のこと”として語れるか、どれだけ誠実でいられるかですし、そうした思いの強さがサプライヤー企業の皆様を動かす力にもなります。どのようにして人と人をつないでいくか、思いをつなげていくかといった心を通じた働きかける部分も大事だと思っています。
ー今後の展望についてお聞かせください。
Matthew : 高まるニーズに合わせて、エコバディス・ジャパンとしてもバイヤー企業サポートチームとしても、さらなる事業の拡大を見込んでいます。オンボーディングは半年間という限られた期間で、オペレーションと戦略の両方をカバーしなければなりません。AI機能や新たなツールなど、アップデートされるサービスも十分にご活用いただけるように、目標や使い方、地域の言語に合わせたトレーニングを実施するなど、さらに効率的なサポート体制を構築したいと考えています。
日本を含め、サステナビリティの全体的な水準は着実に向上していますし、求められる取り組みのレベルもさらに上がっています。ベストプラクティスは常に更新されるため、最新の情報をキャッチアップすることが重要です。バイヤー企業の皆様がサプライヤー企業の皆様に、受審の理由やその価値をしっかりと共有できるように支援を続けていきます。
吉村 : 最終的に目指すのは、持続可能な社会の実現です。しかし、それは誰か一人や一部の企業の努力で達成できるものではありません。まずはバイヤー企業のプログラムマネージャーの方を巻き込み、その方がサプライヤー企業の皆様を巻き込み、そうやって影響し合うなかで大きなうねりを作り出していかなければならないと思っています。
特に日本の企業では、プログラムマネージャーの方がお一人でサステナビリティの推進を担当されることも少なくありません。そうした方を一人にさせてしまうことなく、常に寄り添いながら状況に合わせたサポートを提供することが大切です。
EcoVadisのプログラムに関わる方をどのようにエンゲージしていくのかをさらに突き詰めたいですし、同時に、私たちも自らのサステナビリティパフォーマンスを向上させていかなければなりません。私たち自身がサステナビリティ活動を“自分のこと”として捉えて推進することで、お客様を含め、すべてのステークホルダーの皆様と共に持続可能な社会の実現を目指していきたいと考えています。
【その他のエコバディス・ジャパンチームご紹介】
・代表取締役の記事は こちら
・アナリストチーム紹介は こちら
・評価依頼企業(バイヤー)サポートチーム紹介は こちら
・評価対象企業(サプライヤー)サポートチーム紹介は こちら
Matthew Chauveau(マシュー・ショヴォー)
エコバディス・ジャパン株式会社
カスタマーオンボーディングチームリーダー
サステナビリティと経営管理を大学院で専攻し、エコデザイン・ITエンジニアとしてキャリアを開始。その後、自動車関連工具の日系メーカーにて技術営業・アカウントマネージャーを担当する。エコバディス・ジャパンに入社後、カスタマーオンボーディングチームリーダーとして日本、アジア地域のカスタマーオンボーディングチームを率いる。
吉村良子(よしむら・ようこ)
エコバディス・ジャパン株式会社
カスタマーサクセスマネージャー
輸入自動車業界でキャリアをスタートし、IT業界へ。15年以上にわたり、アカウントマネジメント&カスタマーサクセスのフィールドで業務を担当。現在はリーダーとして、エコバディス・ジャパンのカスタマーサクセスチームを率いている。
インタビュー撮影場所:WeWork 麹町
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