サステナビリティへの取り組みの可視化は、グローバルでビジネスを展開する企業にとって避けられない課題となっている。一方で、日本企業には長年の慣習が根強く残り、グローバルスタンダードとのギャップが存在する。そこで、バイヤー企業と連携しながら日本企業の実力を適切に評価する橋渡しを担うのが、EcoVadisの評価受審企業(サプライヤー企業)サポートチームだ。同チームのマネージャー・山本美和子(やまもと・みわこ)に話を聞いた。
ー エコバディス・ジャパンのサプライヤー企業サポートチームについて教えてください。
サプライヤー企業の皆様をサポートするプロセスは、4つのステップに大きく分けられます。ステップ1では、企業の基本情報と担当者の方の連絡先を登録していただきます。その情報をもとに、エコバディス・ジャパンの専任のサポートチームが企業様に直接連絡を取り、EcoVadis評価の仕組みと進め方を日本語で詳しく説明します。企業様はこの段階で全体的な評価の流れとプラットフォームの操作を理解し、準備を進められます。
ー サプライヤー企業の皆様にはどのような説明をされるのでしょうか?
バイヤー企業様からサプライヤー企業様に対して事前に受審を打診されることもありますが、私どもからもバイヤー企業様に代わって連絡をとらせていただいています。大手企業の皆様は受審の打診を受けられることに比較的慣れていらっしゃいますが、中小企業の皆様の場合、突然の連絡に戸惑われることも少なくありません。
私たちは説得する立場ではなく、バイヤー企業の皆様の意図を正確に伝えることを第一義としています。バイヤー企業のCPO(チーフ・プロキュアメント・オフィサー)やシニアバイスプレジデントの方から正式なレターをいただき、これを携えてEcoVadisの選択の背景やサステナビリティ評価を受審していただく目的を丁寧に説明していますので、最終的には安心してご参加いただいています。
ー 受審が決まった後、どのようなステップが続きますか?
ステップ2では、ご登録いただいた企業様の情報をもとに、EcoVadisのアナリストが約8週間かけて文書の分析と評価を行い、スコアカードを作成します。スコアカードには、EcoVadisの四つの評価軸(「環境」「労働・人権」「倫理」「持続可能な調達」)ごとの得点と総合得点が記載されています。このスコアカードは視覚的にもわかりやすく設計されており、企業がどのようなパフォーマンスをしているかが一目でわかります。また、得点の根拠や改善点についても、詳細なフィードバックが提供されます。
ステップ3は、企業が受け取った自社のスコアカードの内容への理解を深めていただくフェーズです。EcoVadisは世界の規制やガイダンスに基づいた評価を行っていますが、日本の商習慣の違いに起因する質問なども多く寄せられます。スコアカードの内容についてご不明な点があれば、ヘルプセンターのWebフォームを通じてご質問を受け付けています。
ステップ4は、スコアカードの内容をご理解いただいたうえで是正措置計画を立案するフェーズです。これにより、バイヤーとサプライヤーがともに改善点を認識しやすくなります。具体的にはプラットフォーム上で、次回の改善に向けた計画を立て、指摘された改善点への対応に関する内容、担当者(部門)、スケジュールなどを記載していただきます。
ー 海外と日本の商習慣の違いについて、具体的な例はありますか?
例えば、日本企業は社内文書に企業名やロゴを記載しないケースが多い一方、海外企業はレターヘッドにロゴが印刷されているのが一般的です。EcoVadisの評価では、企業名が特定できない場合は評価対象外になってしまうため、これに関する質問が寄せられることがあります。こうした点では、日本企業の皆様にグローバルスタンダードに合わせていただく必要があり、丁寧にご説明しています。
また、総合商社の存在も日本ならではだと思います。総合商社では事業分野が多岐にわたるケースが多く、一つの質問票では評価が難しい場合があります。そのようなときは、まずお取引の主軸を担う子会社や製造拠点へ評価範囲を移管できないかを確認させていただき、対応を考えます。それが難しい場合でも、事業部単位での評価を実施できるかどうかを見極め、EcoVadisの評価手法に則った上でコングロマリットの企業様のニーズにも応えられるように努めています。
日本企業の7割以上が中小企業ですが、EcoVadisは中小企業の評価にも対応していることが大きな特徴であり、強みだと言えます。EcoVadisのサステナビリティ評価の質問票は、企業規模、事業内容、ロケーションで作成されていますので、従業員数が数人といった小規模企業の皆様にも評価を提供することが可能です。
ー グローバルな規模の評価に慣れていない日本企業は、どのようにすればその課題を乗り越えられるのでしょうか?
まずは一度、EcoVadisの評価を受審いただき、自社のベンチマークを認識していただくことが第一歩です。その際、EcoVadisでは企業様のニーズに合わせたプランを複数ご用意しておりますので、お気軽にサポートチームにご相談下さい。例えば、EcoVadisでは「セレクトプラン」というプランをご提供しています。このプランには、事前の質問票の入力支援(※ 条件が当てはまる場合に限る)やオリエンテーションコール、アナリストによるデブリーフィングといったサポートが含まれています。これにより、実力に見合った評価を得やすくなるという大きなメリットがあります。私たちのサポート体制が、グローバルスタンダードに沿った評価への橋渡しともなります。(各プランの詳細はこちらをご覧ください)
ー 今後の目標について教えてください。
日本企業の皆様にEcoVadisをより広く活用していただき、サステナビリティ担当者の方の業務効率化と日本企業のサステナビリティ推進を後押ししたいと考えています。多くの企業のご担当者様から、「取引先からのアンケートが年間何百件もあり負担になっている。EcoVadisに一元化し、年に一度の評価で済ませたい」との声をいただいています。
世界のバイヤー企業にとって、多くの製造拠点が集まっているアジアは、いわば「世界のキッチン」です。このアジア地域において、日本は大手から中小企業までが一丸となってサステナビリティにしっかりと取り組むことで、ロールモデルになろうとしています。
日本法人を立ち上げた2019年頃と比較して、規制の強化や市場の要求により、この5年で日本企業全体の社会的責任に対する意識が大きく向上したことを実感しています。私たちはこの変革を積極的にサポートすることを目指しています。
例えば、2023年から、日本では有価証券報告書においてサステナビリティ情報の一部開示が義務付けられました。これにより上場企業のサステナビリティ情報は開かれたものになりつつありますが、中小企業や小規模事業ではどうでしょうか。特にサステナビリティ情報に関しては、透明性をなくして、向上しにくいことも現実です。
こうした問題を解決するために、EcoVadisでは受審企業向けプラットフォームの「メトリクス」という機能(レーティングプラットフォームの専用モジュールで、サステナビリティとカーボンパフォーマンスに関する自己申告方式の定量的な情報が含まれる)をご用意しています。こうした機能を積極的にご活用いただき、企業規模を問わず、サプライヤー企業のサステナビリティ情報も、バイヤー企業の皆様に閲覧していただけるように促していきたいと思います。
【その他のエコバディス・ジャパンチームご紹介】
・代表取締役の記事は こちら
・アナリストチーム紹介は こちら
・評価依頼企業(バイヤー)サポートチーム紹介は こちら
山本美和子(やまもと・みわこ)
エコバディス・ジャパン株式会社
Rated Customer Success アジア・パシフィック+ 日本地域マネージャー/CSRエキスパート
<プロフィール>
総合商社のファッション・マーケティング部門を経て、フリージャーナリストとして新聞、雑誌、ウェブサイトに多数の署名原稿を寄稿・連載。2019年2月にエコバディス・ジャパン株式会社の第一号社員として入社。現在は日本・アジア各国の大手受審企業の専任アカウント・マネージャーをとりまとめる。
インタビュー撮影場所:WeWork 麹町
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著者について
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