EcoVadisを活用し「選ばれる企業」を目指す、 東洋ビューティの挑戦

東洋ビューティ株式会社
執行役員CSR推進室室長 若林健介 様

1941年に大阪で創業して以来80年あまり、化粧品の開発、製造、販売を通じて「美と健康」を追求してきた東洋ビューティ株式会社。国内外大手メーカーのODM(Original Design Manufacturing: 相手先ブランドでの企画・製造)、OEM(Original Equipment Manufacturing: 相手先ブランドによる生産)を手がける老舗企業です。高品質・高機能・高付加価値化粧品を企画開発から製造までを一気通貫で担うことが可能です。充実した研究開発力に強みを持ち、業界トップクラスの生産設備を備えた複数の工場で製造を行っています。

同社が初めてEcoVadisの評価を受審したのは2019年で、初めての受審でシルバーメダルを取得しました。その後、2020年および2022年にもシルバーメダルを取得するなど、地道な取り組みを続けており、2023年の受審では前回よりも高いスコアを獲得しています。「100年企業」を目指して成長を続ける同社に、EcoVadisの評価はどのような変化をもたらしたのでしょうか。執行役員CSR推進室室長の若林健介さんにお話を伺いました。

——まずは、貴社のサステナビリティへの取り組みについて教えてください。

私自身は2019年に当社へ入社し、管理本部に席を置き、その後、管理本部長として仕事にあたってきました。当社はODM、OEMを手がける会社ですので、発注元の企業から、CSRに関するアンケート調査や、サステナビリティに関する監査、評価受審など、さまざまな依頼が持ち込まれます。取引先にはグローバル企業も多く、英語で回答しなければならないことも多々ありました。CSRの知見も乏しい環境の下、当時は専担部署もなかったこともあり、管理本部の総務や法務の担当者が中心となり、苦労しながら対応してくれていました。

サステナビリティに対する社会的関心の高まりを受け、専門の部署であるCSR(Corporate Social Responsibility)推進室を立ち上げることになったのが2022年10月です。以来、室長としてCSRの推進に取り組んでいます。初めはわからないことだらけの状態でしたが、手当たり次第に本を読んだり、専門家の話を聞いたりしてCSRについて学び、少しずつノウハウを蓄積している状況です。

——2019年、2020年、2022年、2023年とEcoVadisのシルバーメダルを受賞されています。受審してよかったと感じることはありますか。

CSR推進室の立ち上げ当初、どの施策をどんな順番で進めるべきか迷うことも多かったのですが、EcoVadisの評価が「道しるべ」のような役割を果たしてくれました。「環境」「人権」など複数の項目について具体的なスコアが示されているので、自社の状況を客観的に把握し、やるべきことの優先順位を決める上で大いに役立っています。

サステナビリティの評価機関は世界中にありますが、企業にとっては、より普遍的な価値が高い組織による評価が、ビジネスパートナーからの信頼に直結します。当社の取引先である大手グローバル化粧品メーカーからも、EcoVadisの評価を受けるよう依頼されています。パートナー企業から届くアンケート調査でも「EcoVadisの評価を受審している企業は回答不要です」などと書かれていることがあり、そんなときには「EcoVadisの評価を受けていてよかった」と思いますね。

また、受審を重ねる度に、スコアが上がっていったことで、継続の重要性も実感しています。スコアを積極的に公開・共有することで経営陣をはじめ、社内でも少しずつEcoVadisの評価に対する認知が広がり、「サステナビリティに取り組まなければ」という想いが現場にも広がっていると感じます。

具体的には、「ScopeをベースとしたCO2排出量の算定」「CSR活動の仕組みの整備」「人権領域に関する方針の明文化と取り組みの加速化」を最初に注力することにしました。CO2の排出量については、Scope1とScope2から始め、各事業所の担当者の理解と協力を得ることができました。また、CSRに関するウェブサイトも新たに設立し、来年初めには結果を公開する予定です。

——社内でも、サステナビリティへの意識が高まっているのですね。

経営陣に対しては、EcoVadisをはじめとするさまざまな調査や監査の結果をありのまま、かつタイムリーに報告するよう心がけています。結果として、ボードメンバーがCSR、サステナビリティ関連の情報に触れる機会も増えていると思います。

サステナビリティに関する評価を受けるには、データや報告書、活動の記録など具体的な「エビデンス」の提出が必要なので、現場の協力が欠かせません。2023年にEcoVadisの評価を再受審するにあたり、社内の関係部署にエビデンスの提出を依頼しました。その際、工場をはじめとする各事業所から、予想をはるかに超える膨大な量のエビデンスが集まって、私自身、大変驚きました。

例えば、工場では日本語が得意ではない外国籍のメンバーを対象に、安全衛生や防災について、講習会を開くだけでなく、翻訳したしおりを作成したり、また、普段から日本語教育を継続的に行ったりしています。その過程において自然と残る「手垢の着いたエビデンス」が私の手元にたくさん提出されて来ました。エビデンスとして提出するためのふだんは触れる機会の少ない規定を引っ張り出してくるのではなく、現場で主体的に取り組んでいたエビデンスが集まり、混沌とした申請作業にあって、大げさではなく少し胸が熱くなりました。

「CSR」「サステナビリティ」と聞くと、新しいことに一から取り組まなければならないと感じるかもしれません。でも、実は、それらは日本企業が古くから大切にしてきた「三方よし(売り手、買い手、世間に豊かさをもたらす状態)」にも通じる概念だと感じます。それゆえ、CSRやサステナビリティの根底にある考え方を理解した上で社内を見ると、既に実現できていることもたくさんあると思っています。当社にとっては、EcoVadisの評価を受審することが、これまでスポットライトが当たらなかった自社の取り組みを再発見するきっかけになりましたし、CSR推進室として、それらの現場の取り組みを、しっかりとCSRにリンク付け(紐付け)できるよう整理をしないといけないと思っています。

——サステナビリティを推進するにあたり、今後EcoVadisの評価をどう活用していきたいと考えていますか。

社内で意識が高まりつつあるとはいえ、拠点によって温度差があったり、自分たちの活動がサステナビリティにつながることに気づけていなかったりするケースもまだまだあると考えています。前提として、なぜEcoVadisのような評価機関による審査が必要なのか、どのような意義があるのかをもっと社内に浸透させていきたいです。担当者だけが手を動かして終わりではなく、意義を理解した上で、「みんなで申請」することがEcoVadisの受審にあたってはとても大切だと思っています。

私自身、社外の方から「EcoVadisのシルバー受賞はすごいですね」と言われ、初めて「すごいことなんだ」と認識できました。シルバーメダルを受賞したことの意味について、今後もっと、積極的に社内に、社外に伝えていきたいですね。

——これからサステナビリティ推進に取り組みたいと考えている企業へのアドバイスをお願いします。

当社もサステナビリティについてはまだまだ道半ばで、まだまだアドバイスできる立場ではないというのが正直なところです。CSRやサステナビリティへの取り組みは、企業にとって、すぐに売り上げにつながるようなものではありませんが、当社のある工場長の言葉を借りれば、「今後一番やらなければならないこと」だと考えています。

例えば外部のコンサルティング会社に依頼すれば、すぐにCSRレポートはできるでしょう。でも、CSRの本質を考えた場合、私たちは「自分たちでちゃんと取り組みたい」と考えています。

——CSRやサステナビリティに「ちゃんと取り組む」とは具体的にどういうことでしょう。

それは難しい質問です。形式的なことにとどまらず、正面から、誠実に取り組むことかと思います。例えば取引先からサステナビリティ方針などについて、賛同やコミットを求める相談・要請があった場合、表面的な対応ではなく、誠実に現状と課題を伝え、本音で話し合いをしたいと考えています。今すぐに先方が目標とする100%の数字は達成できなくとも、それが共感できるものならば、賛同できるという姿勢をきちんと示し、我々もそのための努力をする。そんな会社でありたいと考えます。前向きに取り組む姿勢を示すことは、長期的な信頼関係を築く上で非常に重要です。

高品質な製品をつくること、納期や価格において競争力を高めることは大前提ですが、それだけでは選ばれない、受注できない時代になりつつあることを肌で感じています。対外的にも、そして社内に対しても、「東洋ビューティは、CSRについてもなかなかやるじゃないか」と感じてもらえるよう、今後も一歩ずつ誠実な取り組みを続けていきたいです。

著者について

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EcoVadisは、世界のビジネスにおいて最も信頼されるサステナビリティ評価の提供をミッションとする会社です。専門知識とエビデンスに基づく独自の評価システムにより、企業とその取引先のサステナビリティパフォーマンスを監視し、改善のための提案を行っています。EcoVadisによる評価は200の業種と175カ国の状況を網羅しており、実用的なスコアカードやベンチマーク、脱炭素に向けたアクションツール、インサイトを通じて、環境的で社会的かつ倫理的な改善を促進します。

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